血液検査項目「MCV」値

血液検査の項目にある「MCV」は、栄養学的にはとても重要な項目です。

これは、鉄の指標であり、またビタミンB12や葉酸の指標でもあるからです。

一般の医療における「正常値」は範囲が大きく、正常範囲の最低ラインや最高ラインに対して

細かい分析はしません。一方で、栄養学としては(分子栄養学としては)正常範囲内でも、

さらに絞って最適値を見出します。最適値でなければ、たとえ正常値範囲でも、さまざまな状態や

症状を疑うのです。

MCVの最適値は、90~92です。※個体によって最適値がやや変わることがあります。

MCVとは、平均赤血球容積のことで、「赤血球の大きさ」を表します。

これが小さすぎてもよくありませんが、大きすぎても末梢血管に入りませんので、良くないのです。

簡単にいうと、MCVが93より大きい数値の場合、葉酸、B12の不足や欠乏が考えられます。

MCVが90より低い数値の場合は、鉄不足や鉄欠乏の可能性があります。

炎症でもMCV値は低くなります。

ただし、厳密にいうと、これらは他の項目と照らし合わせながら判断しなければなりません。

たいてい貧血があると、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(HGB)、ヘマトクリット(HCT)

が低下します。

また、貧血の原因を考えるとき、MCV、MCH、MCHCも参考になります。

MCHは、赤血球1個あたりの平均ヘモグロビン量で、MCHCは赤血球中の平均ヘモグロビン濃度です。

MCVが低下し、MCHCも低下している場合、鉄欠乏性貧血の可能性があります。

(出血性の場合も含む)

そして、MCV が上昇し、MCHCが正常(31~36)の場合にビタミンB12や葉酸の不足を疑います。

MCVが高値で、ビタミンB12や葉酸の不足が疑われる場合、これらの栄養素を含む食品を日ごろから

きちんと食べているかを確認します。

ビタミンB12の食品…

しじみ、赤貝、あさりなど貝類、牛レバーと鶏レバー、煮干し、さんま、いわし、いくら、すじこ、

たらこ など。

葉酸の食品…

レバー、海藻類(特に海苔)、豆類(特に納豆)、きのこ類(エリンギ、えのきなど)、卵、

芽キャベツ、味噌、いちご、アボカド、パセリ、ほうれん草、小葱、菜の花、春菊、アスパラガス、

煮干し、ホタテ、チーズ、枝豆、モロヘイヤ、サニーレタス、ブロッコリー、オクラ、

ピーナッツバター、ライチ、マンゴー、切り干し大根、かいわれだいこん、干しシイタケ、ケール 

など。

これらの食品をあまり食べていなくて、不足しているのなら、食べれば解決です。

しかし、問題は、これらの食品を食べているのに、MCVが高値であることです。

つまり、葉酸、B12を食べているのに、不足している。。。

さて、この事象はなぜ起きるのでしょう?

いろいろな理由が考えられますが、たいてい共通する原因として、「低胃酸」というものがあります。

案外、日本人には低胃酸の人が多いのです。胃薬(胃酸を抑える薬)の広告やCMを見ると、

胃酸過多の人が増えているように思えるでしょう。

たしかに、ストレス過多によって、空腹時に胃酸が過剰に分泌され、潰瘍の原因になることも少なく

ありません。しかし、食事のときには、しっかり胃酸が出る必要があるのに、なかなか出が悪い人が

多いのです。

食事中に胃酸が出ることは、消化の要(かなめ)であり、殺菌効果もあります。

そして、ビタミンB12や葉酸の吸収にも胃液は重要で、他にも、タンパク質、そして亜鉛、鉄、

マグネシウム、カルシウムなどのミネラルの消化吸収にも必要です。

よって、低胃酸や、胃の環境が悪いと、ビタミンB12や葉酸の吸収が悪くなり、

結果、MCVが高値になるのです。

では、なぜ低胃酸になるのでしょうか?理由はさまざまですが、おもに

  • ピロリ菌感染
  • 胃薬(制酸剤)の飲みすぎ
  • 精製された糖質の食べ過ぎ
  • 冷たい飲み物を飲み過ぎる
  • ストレス過多
  • 遺伝的体質
  • 低タンパク 

などが考えられます。

低胃酸の対症療法的な改善策としては、「食前」に以下のものをどれが摂ってみるといいです。

  • 希釈したお酢
  • 酢の物
  • パセリ
  • ミントの葉
  • 生姜
  • アップルビネガーサイダー
  • レモン水

など。

また、胃酸不足を解消する長期的な対策としては、

  • ナイアシン
  • ビタミンB1
  • 亜鉛
  • タンパク質(アミノ酸)
  • ボーンブロス

などが活躍します。

ちなみに、ご自身が低胃酸かどうかを確認するセルフチェック法があります。

※これはあくまで目安です。

『胃酸状態のセルフチェック』

①朝起床後、飲まず食わずの状態で、重曹(ベーキングパウダー)を小さじ1/3杯(約2g)を

コップ1杯の水に溶かす。

②ゆっくりと飲む(最低100cc)。

③5分以上経ってもゲップが出ない場合、低胃酸の可能性がある。

また、医療機関で確認したい場合、ペプシノーゲン検査をするといいでしょう。

これはピロリ菌の検査の時に、してくれるところが多いです。

・ペプシノーゲンⅠとペプシノーゲンⅡの数値を確認。

・Ⅰ/Ⅱ比 ≧5かつペプシノーゲンⅠ=60~70は正常。 40以下は低め。

・ Ⅰ/Ⅱ比 <5 は萎縮性胃炎がある可能性が高い。(この時、ペプシノーゲンⅠの値はあてにならない。)

また、サプリメントで、B12と葉酸を補給したいときは、まず試してみて、それでも数値が上がらない

場合は、B12はリキッドタイプのものを選び、舌下吸収させてください。

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