「ちょっとしか食べていないの、すぐにお腹がパンパンに張ってしまう!」
こういうことが頻発している人は、SIBO(シーボ)の疑いがあるかもしれません。
SIBOは、「小腸内細菌異常増殖症」のことで、本来、大腸にいる腸内細菌群が小腸にまで大量に
押し寄せてしまいます。つまり、小腸内で異常繁殖してしまい、腹部膨満、下痢、腹痛、鼓腸などが
あらわれる症状のことを言います。
SIBOでは、悪玉菌にかかわらず善玉菌も過剰になっています。
たとえ善玉菌でも、小腸内で異常に繁殖すると、不快を感じ続けてしまうのです。
腸の調子が悪く、腸内フローラ検査をすると、妙に乳酸菌が多かったり、便秘症状に悩まされている
人に異常にビフィズス菌が多かったりと。やみくもに善玉菌がたくさんいれば良いというわけでは
なくバランスなのです。
十二指腸や小腸の上部(空腸)は、通常、無菌または1000CFU/cc以下の細菌が存在します。
※CFUとは、コロニー・フォーミング・ユニットの略で、細菌数の単位です。1ccあたりに100個の腸内細菌が存在する場合は、100CFU/ccとなります。
しかし、本来は細菌が少ない小腸の上部に、もし10万CFU/cc以上も腸内細菌が存在すれば、これは
異常繁殖とされ、「SIBO」の診断目安とされるのです。
小腸内で細菌が異常増殖してしまうと、本来、大腸で発酵されるはずの糖や食物繊維などを小腸内で
発酵してしまい、炭酸ガス、水素ガス、メタンガスの大量発生によって、腹部膨満(お腹の張り)に
つながるのです。
よくあるパターンとして、「健康に良いとされる食物繊維やオリゴ糖を食べたら、お腹が膨らんで、
ガスがよく出ます!」「味噌でさえ、腹部膨満になります!」という声です。
栄養素の吸収場所でこうした異常発酵が起きてしまえば、糖質、タンパク質(アミノ酸)、脂質の
吸収が邪魔されるだけでなく、ビタミンやミネラルの吸収さえも阻害されてしまい、気付いたら
「きちんと食べているのに栄養不足になっている!」現象を引き起こすのです。
研究では、SIBOは、脂溶性ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB12、そして鉄などの、
ビタミン&ミネラル欠乏をもたらすと報告されています。
(Dig Dis Sci. 2001 May;46(5):1077-82)(Ther Adv Chronic Dis. 2013 Sep; 4(5): 223–231)
では、SIBOの原因には、いったいどのようなものがあるでしょう??
【SIBOのおもな原因】
- 抗生物質の不適切な過剰投与
- プロトンポンプ阻害薬(胃酸を抑える薬)
- 落下腸・ねじれ腸
- 精製糖質の過剰摂取
- アルコール過剰
- 低胃酸
- ピロリ菌感染
- 胆汁酸分泌の低下(低コレステロール)
- 胆のう除去
- 消化管の運動機能障害
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 甲状腺機能低下症
- セリアック病
- 小麦グルテン過敏症
- 糖尿病
- クローン病
など。
特に、抗生物質やプロトンポンプ阻害薬の影響は大いにあります。
さて、SIBOかどうかを判断するにはどうしたらよいでしょう。
それは、SIBOを専門に診察してくれるクリニックや病院にまず行くことです。
そこでは、通常、SIBOの検査があります。
これは、ラクツロース呼気検査と呼ばれ、発酵性のあるラクツロースを摂り、呼気として排出された
ガスを検出し、ガスのピークが2回起これば、SIBOの疑いがあるとして、診断されるものです。
ガスのピークが2回起こるのは、小腸内で1回起こり、そして大腸内でもう1回起こるからです。
SIBOでなければ、通常、ガスのピークは1回しか起こりません。
また、SIBOになると、小腸内の細菌が発した大量のガスが、十二指腸を通り越して胃まで刺激して、
逆流してしまうことがあります。
この場合、胃の中は過剰なガスで圧迫されてしまい、ガスとともに胃酸が食道に逆流し、胸焼けが
ひどくなるのです。つまり、逆流性食道炎です。もちろん、逆流性食道炎の原因がすべてSIBOという
わけではありませんが、少なからずあり得ます。
SIBOの一般的な治療として、SIBOに対する抗生物質である、リファキシミンが処方されます。
SIBOの原因に抗生物質投与というのがあるのに、それを治療するのも抗生物質??と
いっけん矛盾があるように思えますが、リファキシミンは、ほとんど副作用のないものなので、
これでたいてい寛解することが多いです。治療中における食事療法としては、
- 腸もみをする(日本人には落下腸・ねじれ腸が多いため)
- 低FODMAP食(発酵性のある食品を除去。糖質制限に近い。)
- オレガノオイルのサプリメント
- ココナッツオイル・MCTオイルの使用
- ベルベリンのサプリメント
- ニンニクエキスのサプリメント(ニンニクではオリゴ糖が入っているため)
などが主流です。
また、人によっては、「酵母」の過剰摂取が、SIBOをさらに悪化させる原因となることがあります
ので、念のため注意しましょう。
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