睡眠不足は、
さまざまな障害を生み出してしまいます。
ハーバード大学医学部のホームページには、睡眠不足は、サイトカイン、インターロイキン6、
CRPなどの炎症マーカーを増やしやすいと書かれています。
実は、睡眠不足は炎症の原因となりやすいのです。睡眠中は血圧を低下させるのですが睡眠不足に
なると、日中の血圧が持続してしまい、血管壁の細胞が炎症を起こす原因にもなってしまいます。
別の研究では、深い睡眠は、認知症に多い、脳のβアミロイドというタンパク質を一掃するのに、
役立つことがわかっています。
そして、睡眠不足は、ホルモン代謝をつかさどる脳の「視床下部」や記憶の機能を担う「海馬」
などの機能を低下させることがわかっています。
睡眠不足でもっとも多い報告は、糖尿病との関連です。
たった一晩の睡眠不足によって、インスリンの効きが悪くなり(インスリン抵抗性になり)
血糖コントロールが悪化しやすくなります。
そして、睡眠不足は肥満を助長します。別の研究では、睡眠不足はアレルギー体質になりやすい
ということも発表しています。
こうして、眠るということは、ただ、体を休めるということだけでなく、さまざまな代謝の調整が
行われているのです。
2010年のイギリスの研究では、130万人の調査で、睡眠時間が短くなると(7時間未満)、
死亡率が12%高くなることが判明しています。
研究者らは同時に睡眠時間が長すぎると(9時間超)、死亡率が30%高くなるとも述べています。
こう考えると、(厳密には人にもよりますが、)最適な睡眠時間は7~8時間ぐらいでしょう。
では、睡眠の質を高めるには、どうしたいいでしょう。まずは、何を控えるか、が重要です。
たとえば下記です。
・カフェイン
・砂糖や甘味料
・グルタミン酸
・ブルーライト
・ストレス
・副腎疲労
・アルコール など
これらの習慣は、睡眠の質を下げてしまいます。できるだけ、控えましょう。
では、何を積極的に摂っていくのがいいでしょう。
まず先に、下記の3つをチェックしてください。
・鉄欠乏がないか?
・低タンパクになっていないか?
・ビタミンB6不足がないか?
閉経前の女性や、成長中の子どもに多いのが、鉄不足や鉄欠乏です。
私たちの睡眠を誘発するホルモンに、「メラトニン」というのがあります。
メラトニンは、トリプトファンというアミノ酸を原料にして、いくつかの代謝を経て、
作られます。その時の代謝に、鉄が必要です。
鉄が足りていないと、メラトニンの合成が弱くなるかもしれません。
実際に、2015年の、鉄欠乏104人の研究では、正常群と比較して鉄欠乏患者の方が睡眠の質が悪い
ということがわかりました。
また、トリプトファンはアミノ酸ですから、タンパク質の摂取量が少ないと、当然トリプトファン量
も減少します。こうして、メラトニン不足を助長してしまいます。
そして、B6不足です。
メラトニンは、トリプトファンを原料にして、そこから経た中間代謝物セロトニンから作られます。
このセロトニンを作るには、ビタミンB6が重要となってきます。
だから、当然B6が不足していれば、結果として、メラトニン合成が弱くなるのです。
B6を多く含む食品は、にんにく、ピスタチオ、ごま、レバー、鶏ひき肉、鶏ささみ、鮭、海苔、
アマランサス、サンマ、アジ、サバ、牛肉、大豆、するめ、バナナ、アボカドなどです。
また、B6はその必要量(RDI基準)の86%は、腸内細菌によって合成されます。
よって、腸内環境を正常に整えておくことも、B6を充足する上で、重要です。
続いて、睡眠に重要な栄養素は、マグネシウムです。
メラトニンはセロトニンから作られることは、先述のとおりですが、このときマグネシウムが
必要です。マグネシウム不足は睡眠の質を低下させやすくなるので、注意が必要です。
2012年のイランの研究では、高齢者46人の二重盲検で、8週間毎日500mgのマグネシウムを
投与したグループは、プラセボ群より睡眠時間と睡眠効率、そしてメラトニンが有意に増加しました。
(J Res Med Sci. 2012 Dec;17(12):1161-9)
1993年の基礎研究では、マグネシウム欠乏のラットは睡眠パターンに乱れが生じ、覚醒状態が増加した
ということが報告されています。他にも、ビタミンB12が重要です。
メラトニンは、セロトニンから作られますが、このときマグネシウムだけでなく、SAMe(サムイー)
という(メチル基という物質を供給する)成分も必要です。
このSAMeを作るには、メチレーション回路という生化学代謝が必要なのですが、この時に葉酸とB12がメインで使われます。
1996年の北海道大学医学部の研究では、8人の若年男性を対象にした試験で、ビタミンB12が
メラトニン濃度を増やし、体内時計の同調に貢献しています。
1996年の別の研究でも、ビタミンB12 の摂取は「睡眠の質」「爽快感」と有意な相関を示しています。
ビタミンB12はメラトニンに直接影響を与えます。最後に「ビタミンD」です。
ビタミンDは睡眠の質を改善することがいくつかの研究で、証明されています。
2015年の、68歳以上の米国男性3,048人を対象にした研究では、血清ビタミンD濃度が低いと
睡眠時間が短く、睡眠効率が低下するなど、睡眠不足につながっていました。
以上のような栄養素を普段から意識して摂ることが重要です。
ただし、ある程度、即効性を求めたいのなら、メラトニンサプリを利用することが
一般に進められます。長期服用では副作用がある睡眠薬に比べ、メラトニンサプリはほとんど副作用のないものです。
※ただし、妊活中男性の精子減少が指摘されています。女性については、副作用がほとんどありません。
どうしても熟睡を促したいときは、メラトニンのサプリメントを服用するのもありです。
メラトニンは血液脳関門を容易に通過できるので、即効性があります。
まずはお試しとして、メラトニン3mgを寝る15分ぐらい前に飲むと良いでしょう。
※メラトニンサプリには1mg,3mg,5mg,10mgがあります。
ほかにもハーブとして、カモミールが有名です。
寝る前のハーブティーとして、カモミールティーを飲むと、リラックスでき、
眠につきやすくなるという研究が多数あります。
また、バレリアンルートやラベンダーも有名です。
眠の浅い人は、これらを参考に、いろいろと試してみてください。
※治療中の方は、主治医の指示に従うこと。また、日中の運動も、夜の睡眠に結び付きやすいです。
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