認知症を予防する食事

認知症の中で最も多いのが「アルツハイマー型認知症」です。

このアルツハイマー病は、認知症の全体の約7割を占めているといわれ、他の認知症のタイプに

比べても、増加傾向にあります。

アルツハイマー型認知症では、アミロイドβやタウという異常タンパク質が多く見られ、神経細胞

がダメージを受けます。脳画像では、記憶をつかさどる脳の「海馬」やその周辺に脳の萎縮が見られます。

特徴として、男性より女性の発症率が高いです。経過としては、もの忘れに始まり、ゆっくり進行していきます。

多くの人に自覚症状がありません。気づいたときには重症化しています。

怖いのは、、体は元気なのに、脳がぼけているため、知らずして、多くの人に多大な迷惑をかけてしまうというところにあるでしょう。

アルツハイマー病のリスク因子としては、一般的に

・加齢

・家族歴

・ApoE4などの遺伝子（約5.5倍の発症率）

・高血圧

・糖尿病（約1.3～1.8倍の発症率）

・喫煙

・高脂血症

などが指摘されています。

特に、ApoE（アポリポ蛋白E）は、アルツハイマー病の発症にかかわる極めて重要な遺伝子です。

しかし、最近では、（特に海外では）これらのリスク因子以外に、食事と栄養の重要性が唱えられるようになりました。

過去の研究を総括すると、認知症の予防に良い食材や栄養素は下記です。

・青魚（EPA・DHA）

・野菜

・フルーツ

・ポリフェノール

・フラボノイド

・緑茶のEGCGとテアニン

・青大豆

・アスパラガス

・タマネギ

・コエンザイムQ

・アスタキサンチン

・発酵食品

・クルクミン

・ビタミンB群

・ビタミンE

・ビタミンD

・マグネシウム

などです。

研究では、１日１回以上の魚を食べている人に比べ、ほとんど魚を食べない人は、

アルツハイマー発症のリスクが約5倍に上るということが報告されています。

オメガ３脂肪酸のDHAは、人の脳内に最も多く含まれている脂肪酸（約26.7％）ですが、

老化とともに減少し、アルツハイマー病の脳内DHA量は、健常者の半分にまで減少しています。

認知症を予防する栄養素として、重要なポイントは、やはり脳に届きやすいものとなります。

中でも、アスタキサンチンは、血液脳関門を通過しやすく、脳内で抗酸化を発揮し、

アミロイドβを抑制します。

※血液脳関門・・・脳の検問所。脳には決められたものしか通さない仕組みがある。

脳の神経組織は、腸や血液のようにターンオーバー（細胞の入れ替わり）が基本的にありません。

しかし、最近では、神経幹細胞が分裂・分化して新たな神経細胞が生まれる「神経新生」が

あることが判明しています。

そして、この神経新生を調整する栄養素が、DHA、クルクミン、フラボノイド、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンE、アスタキサンチンなどで、実際にこれらに認知機能の向上が報告されています。

また、脳機能において、神経細胞の発生、成長、維持、再生を促進させる、BDNF（脳由来神経栄養因子）というタンパク質や、老化を防ぎ修復機能のあるNGF（神経成長因子NGF）というタンパク質が

重要なのですが、アルツハイマー病においてはこれらが減少しているということが報告されています。

実は新しい研究では、「発酵食品」がこのNGFを増やすということがわかっています。

2020年に衝撃的な報告がありました。

それは、「フラボノイドの摂取が多い人は、アルツハイマー型認知症になるリスクが大幅に低下する」

というものです。

これは、American Journal of Clinical Nutritionに掲載された研究報告で、2,801人の参加者（平均年齢59歳）の19年追跡調査によると、

ベリー、リンゴ、お茶などのフラボノイド食品をよく食べる人は、アルツハイマー病を発症するリスクが低く、中でも「アントシアニン」が76%もリスクを低下させています。

アントシアニンはフラボノイドの一種で、紫色や赤色の色素成分です。

ブルーベリーなどのベリー類に多く含まれ、ほか、ブドウ、イチゴ、ナス、赤紫蘇、黒豆や黒ゴマなど

にも含まれています。

これらの栄養素や食材が認知症を予防できることは分かりましたが、

逆に、認知症を促進するものはなんでしょう？

2020年に発表されたフランスの大規模コホート研究では、平均年齢78歳の認知症患者200人以上を

対象に、認知症のない同じ年齢層の418人のグループと比較したところ、

・甘いスナック菓子、

・でんぷん質の加工食品

・加工肉

などの食事をよく摂ると、アルツハイマー病を発症するリスクを大幅に高めるということがわかりました。

結局は、アンチエイジングや体に良いことをし続ければ、おのずと、認知症を予防していることにもなりますね。

ぜひ、普段の食事を意識して、栄養を摂っていってくださいね。

まずは、オメガ３やフラボノイドから意識していきましょう。