もともと日本は、カビが増えやすい環境下にあります。
これは生活環境だけでなく、私たちの体内においても、比較的増えやすいということが、
分かっています。
特に女性はホルモンの関係でカンジダ症や真菌症にかかりやすいです。
今回は治療の話ではなく、あくまで予防としての話をしていきたいと思います。
カビの増加は環境に依存してるところが大きく、温度が高くなったり、湿度が高くなると
増えやすいです。
また、甘いものや精白されたデンプン質をよく食べると、体内でも増えます。
カビは正式にいうと「真菌」です。
カビが増殖することを真菌症というのですが、真菌感染症の中でも、最も多いものはカンジダ症です。
カンジダは、酵母(イースト)の一種です。お口の中、腸、皮膚、爪、膣、肺、眼など、
いろんなところに常在している、日和見菌です。
だから、通常カンジダのレベルでは真菌症までにはならず、異常に増殖しはじめると、
いわゆるカンジダ症といわれます。
例えば女性に多いのは、膣カンジダ症です。
研究では、先進国における女性の約75%が、一生のうちに、少なくとも1度は膣カンジダ症に罹患
しているようです。(Lancet. 2007 Jun 9;369(9577):1961-71)
ばい菌というという言葉がありますが、これは漢字では「黴菌(ばいきん)」と書き、
この「黴」という字を辞書で調べたら、実は「カビ」という意味です。
つまり、ばい菌というのは、もともとカビを指していたことになります。
カビが増えやすい原因の一つは、甘いものや精製デンプン食品の食べ過ぎです。
ここでいう甘いものというのは、基本的にフルーツは該当しません。
精製糖質(精白穀物、小麦、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、スナック菓子など)の摂取になります。
※ただし、すでにカンジダ症の場合はフルーツはいったん控えたほうがいいです。
舌を出したときに、白っぽい苔のようなものが見られると、カンジダ症の可能性があります。
免疫力が低下したときにもカンジダの増殖は見られます。
特に疲れているときは、免疫が一挙に下がりますので気を付けましょう。
また、抗生物質投与の後でもカンジダ症は起こりやすいです。
特定の治療中に抗生物質を投与するのは、仕方ありません。
これはきちんと主治医の指示に従い、投与するべきです。そのあとにちゃんとケアをすることです。
ケアとは、プロバイオティクス製剤や味噌などの発酵食品をきちんと摂って善玉菌を回復させること
です。なぜなら、抗生物質は善玉菌も殺菌してしまい、カンジダだけが生き延びてしまうからです。
抗生物質というのは、いわゆる細菌の細胞壁を壊しますが、カンジダのようなカビ、真菌には効き
ません。そして、最近若い人で多いのが、経口避妊薬、つまりピルの服用です。
これにより、カンジダ症になる人が現在多いです。
ほかにもステロイド剤をずっと長年使っている人も、カンジダ症になりやすいです。
あとほかにも、糖尿病や、インスリン抵抗性になっている人も、カンジダ増えやすいですし、
妊娠中のかたも気を付けてください。
一旦感染してしまうと、なかなか厄介で、治療と改善には時間がかかるからです。
とはいえ、予防策はいくらでもあります。
①ココナッツオイル、MCTオイル
まずココナッツオイルです。ココナッツオイルはカビを除去してくれます。
ココナッツオイルの香りが気になる人は、無臭のものもあります(ココウェル社のものなど)。
ココナッツオイルに含まれているラウリン酸は、抗真菌活性といって、カンジダを倒す働きが
あります。2016年の研究では、ココナッツオイルはカンジダに対して抗真菌薬であるケトコナゾールと
いうものに匹敵するほどの抗真菌活性を示したということが発表されています。
(Scientifica (Cairo). 2016:7061587)
これはすごいです。抗真菌薬と同等の活性を持っているというのは。
同様に2007年の研究でも、抗真菌薬のフルコナゾールと同等にココナッツ油は抗真菌活性を示した
と報告されています。(J Med Food. 2007 Jun;10(2):384-7)
この研究者らは、薬剤耐性をもつカンジダの治療に、ココナッツ油は使用されるべきだということを
言っています。また、一部のカンジダは、どうも抗真菌薬などの薬剤耐性を持つことがあり、なかなか死なないということがありますが、ココナッツ油は、そのような薬剤耐性を持つような成分
ではありませんから、とてもおすすめです。
2019年の研究で、早産児にMCTオイルを使うと、カンジダ菌のコロニー(集団の単位)が減少した
ということを発表しています。(Pediatr Infect Dis J. 2019 Feb;38(2):164-168)
ココナッツオイルの効果と言えばラウリン酸ですが、MCTオイルのこの効果はカプリン酸です。
MCTにはカプリン酸とカプリル酸が含まれてますが、中でもカプリン酸が、カンジダに対して非常に
効果があります。
②ニンニク抽出成分
2005年の研究では、ニンニク抽出成分は、カンジダのバイオフィルム(巣窟)を減少させる
ということが発表されています。(Antimicrob Agents Chemother. 2005 Jan; 49(1): 473)
ニンニクの臭いが気になる方は、玉ねぎが使えます。
玉ねぎの抽出成分も、カンジダの増殖を抑制していると報告されています。
(Fitoterapia. 2006 Jun;77(4):321-3)
2016年の研究でも、玉ねぎ、ニンニク、エシャレットなどが、カンジダの増殖を阻害すると
発表されています。(Adv Biores.,Vol.7(1)Jan 2016:125-132)
③お酢
カプリン酸やラウリン酸などの中鎖脂肪酸のような長さの短い脂肪酸は抗カビ効果があるように、
短鎖脂肪酸も同様です。中でも、酪酸や酢酸です。お酢の主成分である、酢酸は、抗カンジダ効果が
あります。日ごろから、お酢の料理を食べましょう。
④クルクミン、ほかハーブ、ほかスパイス
ターメリック(ウコン)の主成分である、クルクミンは、抗カンジダ活性が非常に強いんです。
試験管研究でも、クルクミンはカンジダ系の酵母を殺菌します。
また、少なくとも、その増殖を抑える効果があります。
例えば、クルクミンが臨床研究でよく使われていたのは、HIV感染者です。
HIV感染者というのは、免疫が非常に下がっています。
その関係で、カンジダとか酵母が真菌症になりやすいのですが、HIV感染者にクルクミンを
摂ってもらうと、カビが劇的に減るため、実際に抗真菌薬のフルコナゾールと、クルクミンを
比べると、なんと、どうもクルクミンのほうが効果があった、という報告をしています。
これはすごい。(J Antimicrob Chemother. 2009 Feb;63(2):337-9)
ただし、別の研究者の報告では、カンジダにおけるクルクミン効果はフルコナゾールの効果の
半分ぐらいだと言っているものもあります。
⑤高血糖対策が肝心
2002年のベルギーの研究で、膣カンジダ症を患って、一度治ったのにまた再発してくる女性を調べて
いったら、高血糖体質の人が多かったということを発表しています。
マウス研究でも、免疫力の下がったマウスのえさに、砂糖を結構混ぜたところ、
一挙にカンジダの増殖が見られたと発表しています。
また人間の研究でも、カンジダ症の多い入れ歯をしている人たちを集め砂糖水でうがいをしてもらう
と、口腔内でカンジダの感染症が一挙に増え、酵母も一挙に増えたと報告されています。
別の、ヒトの研究を見ましても、1999年のドイツの研究で、高糖質食ではカンジダを増殖しやすいと
発表されています。キシリトールも、抗カビ対策として使えます。
⑥プロバイオティクス(生きた乳酸菌製剤)
乳酸菌は抗カンジダ活性が強い菌のため特に再発防止にもなりますので、普段から、
プロバイオティクスや発酵食品を摂ることが重要です。
ビフィズス菌も良いのですが、ビフィズス菌は大腸に生息しやすく、乳酸菌は小腸の中で生息しやすい
ので、小腸に多いカビ対策としては、乳酸菌のほうがよいでしょう。
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