里芋と言えば、便秘改善をはじめ腸内環境に良いことで知られていますが、実はその健康効果はそれだけではありません。
世界ではたくさん論文が出ていて、150個くらい集めてレビューした論文が去年ブラジルで発表されています。
(Int J Mol Sci. 2021 Jan; 22(1): 265)
今回はそれを元にお話ししていきます。
■里芋の基礎知識
・学名は「コロカシア エスクレンタ」(Colocasia esculenta)
・主成分がデンプン質で、水分が多いので低カロリー
・山にできる「山芋」に対して、里にできる芋なので「里芋」
・海外ではタロイモと呼ばれる
・日本には縄文時代中期に渡来
・親芋の周りに小芋さらに孫芋がある
・皮膚の痒みの原因はシュウ酸塩で、皮の部分に特に多い
気になる方はゴム手袋をして料理して
・民間療法として糖尿病の予防や治療、下痢体質や高血圧の人に薬膳的に使われていた
・皮にも栄養が詰まっているので、皮も食べて欲しい!
(よく洗って水気を切ったらオリーブオイルで揚げ、塩をかけて食べると美味しいです!)
■実はすごい!里芋の栄養価
・デンプン質が多いため栄養価が期待できないイメージがあるが、実はビタミンやミネラルがバランス良く含まれており栄養バランスが非常に良い
・里芋100gあたり
カリウム640mg(カリフラワーは410mg)
マグネシウム19mg
鉄分0.5mg
・ビタミンB1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、パントテン酸なども十分含まれている
■多くの研究がされている里芋
・2021年リオデジャネイロ連邦大学の里芋のレビュー:里芋にはまだ開拓されていない抗がん作用や免疫調整効果がある
・2005年発表アメリカハワイ大学:結腸がんの細胞株に里芋の抽出成分を添加したところ、結腸がんの80〜90%を抑制した。(アポトーシス(細胞死)を誘導することによって抑制した可能性)
・2012年試験管による研究:乳がん細胞株に里芋成分を添加したところ、約半分以上が消失した
・中国:試験管内で肝臓がんの細胞株に里芋エキスを添加したところ25%が消失した。
・ブラジル:試験管内で人の乳がん細胞株に里芋エキスを添加したところ41%を阻害した。
・グリオーマが65%消失したという結果もあった。
・2021年日本:白血病の細胞株を取り出し、里芋のエキスを添加したところ阻害効果が見られた。
・2013年韓国:里芋に含まれている多糖類が免疫細胞を活性化させ、腫瘍の転移を阻害する効果があった。
・中国 里芋に含まれる多糖類がマクロファージなどの免疫細胞を活性化させ、がん細胞を倒している
いずれも試験管内での研究ですが、里芋の成分には抗がん作用がある可能性を示しています。
■大事なのは里芋の“ぬめり”
・里芋のぬめり成分は「ガラクタン」(多糖類)
・里芋の免疫活性、抗腫瘍効果は、ガラクタンのおかげであると言われています。
・ガラクタンは胃腸の粘膜を守る(胃腸が弱い人は胃腸の粘膜が弱い人が多い)
・ネバネバ系(めかぶ、もずく、納豆、なめこ、山芋、里芋)は胃粘膜、腸粘膜保護作用がある。
■里芋粉での研究
・2016年ナイジェリア:高血糖体質のラットの餌に里芋粉を混ぜたところ、耐糖能(糖質を退社する能力)が改善した。体重も正常になり、肝機能もよくなった。
・2018年バングラデシュ:里芋粉の研究で、耐糖能が改善することがわかった。
・2018年南アフリカ:α-アミラーゼ、α-グルコシダーゼの阻害効果があり、糖質の吸収を緩やかにしてくれることがわかった。
■他にも様々な健康効果がある里芋
・現代の食事は精製糖質が多いことから血糖値が上がりやすいので、糖質を緩やかに吸収する工夫をしていく必要がありますが、里芋にはまさにその効果があります。
・ナイジェリアの研究:動物実験で、里芋を餌として混ぜるとコレステロールや中性脂肪の数値が改善した。
・日本、ニュージーランド:変異原性(遺伝子を傷つける性質)を抑制する可能性があると発表。
・多くのフィトケミカルが含まれていて、酸化ストレスを軽減する可能性があることも発表されている。
このように、里芋は世界中で多くの研究が行われており、便秘改善、腸に良いというだけでなく、免疫力アップ、免疫調整、抗腫瘍効果もあることが発表されています。
食べ方としては、
・長時間火を通しすぎるとぬめりがなくなって有効成分がなくなってしまうので注意
・タンパク源と合わせた方が良いので鶏肉やイカと一緒に食べるのがおすすめ
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