2022年12月20日、『高齢者においてタンパク質の摂取量が少ないと、認知症のリスクが高くなる』
とういう論文が報告されました。(Nutrients 2023, 15(1), 2)
中国による最新報告で、認知障害や認知症の無い6,951人の高齢者を対象にした前向きコホート研究
で、「動物性タンパク質」の摂取量が極端に少ないと、認知障害のリスクがなんと48%も高くなった。
タンパク質といっても、動物性から植物性までさまざまな種類がありますが、この研究では、
高齢者においては特に動物性タンパク質(牛豚鶏、魚介類)が少ないと認知症リスクが上がる結果
となりました。以前、世界五大医学雑誌の一つであるランセット誌でも、世界で多発する認知症の
約40%は、食事や栄養などの要因によって、予防または遅延することができる、と結論づけています。
(J Alzheimers Dis. 2019;67(2):583-619)
タンパク質は、正常な認知機能を維持することにおいて、とても重要な栄養素です。
(Food Funct. 2016 Mar;7(3):1251-65)
2020年の中国の研究者による発表でも、アメリカ国民健康栄養調査(NHANES)の
60 歳以上の人を対象にした、タンパク質摂取量と認知機能の関係を調べた横断研究で、
結果、タンパク質の摂取量が上がるほど、認知機能テストのスコアが良好になりました。
(J Nutr Health Aging . 2020;24(2):223-229)
今年(2022年1月)発表された、ハーバード⼤学による研究では、77,000 ⼈以上の男女を20年間
追跡調査し、結果、炭⽔化物の摂取と⽐較して、タンパク質の摂取が上がるほど、
晩年に認知機能が低下する可能性が低くなるということを報告しています。
(Am J Clin Nutr. 2022 Jan 11;115(1):199-210)
特に高齢になるほど、胃腸機能の低下などの理由により、動物性タンパク質の摂取量が下がる傾向に
ありますので、やはり意識してこれらの食品を摂る必要があります。
ただし、一方で、動物性タンパク質の摂り過ぎは、大腸がんや心臓病などのリスクが上がることも
報告されています。
このパラドックスを解決する策として、
「お肉を食べたら、同時にその1.2倍以上の野菜を食べましょう」というものです。
たとえば100gの動物性食品を食べたら、120g以上の野菜を同時に食べるのです。
それにより、大腸がんや心臓病などのリスクが下がるからです。
事実、日本の疫学調査でも、大腸がんに最もなりやすい食事として、
「肉は食べるが野菜はあまり食べない」があげられる一方、大腸がんにもっともなりづらい食事は、
「肉は食べ、野菜もきちんと食べる」ということが報告されているからです。
これで、認知機能も上がり、大腸がんや心臓病のリスクも下げるはずです。
高齢になればなるほど、しっかり動物性タンパク質を摂取していきましょう。
ただし加工肉は控えましょう。
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