もち麦は食物繊維が効率よく摂れます。しかし、現代の食物繊維量は以前に比べてかなり減っています。1951年では、23.3g/日、2016年では、14.2g/日
(池上幸江 日本食物繊維研究所会誌(1997),1:12)
これに伴い、大腸癌や糖尿病が増えています。1951年の雑穀摂取量は、1日あたりお米356.7g、大麦59.7gだったそうですが、2016年では、1日あたり、お米307.3g、雑穀4.2gです。
そこで、もち麦をおすすめします。白米を炊く時に約3割から5割のもち麦を入れると、一挙に食物繊維の量が増えます。玄米は不溶性食物繊維が主体ですが、もち麦は水溶性食物繊維が主体です。
水溶性食物繊維の機能性の方が現代人にとっては重要であることが多いからです。
厚生労働省は、約20g/日の食物繊維摂取を勧めています。
個体差もありますが20g/日の水溶性食物繊維をとれば、腸内環境改善や慢性疾患の予防に期待できます。しかし、もち麦のβグルカンであればここまで多くとらなくとも、もっと効率よく効果が期待できるのです。※もちろんβグルカン以外の食物繊維も大事です。
βグルカンであれば、数グラム程度の量でその効果が発揮されることが、様々な研究で報告されています。大麦に含まれる水溶性食物繊維質の大部分がβグルカンです。βグルカンは大麦の中でももち麦の方が押し麦よりも多いです。
βグルカンの健康効果は、以下が報告されています。
・血糖値を緩やかにする作用
・腸内環境や細菌叢を整える作用
・血中コレステロールを正常にする作用
・内蔵脂肪の減少効果
・満腹感の持続的効果
・便秘改善やダイエット効果
・抗アレルギー作用
・心臓保護効果
2003年の研究では、10人の健康な女性ボランティアを対象にした研究で、麦ご飯の摂取は、白米ご飯にくらべて、LDLコレステロールの低下作用や、排便量の向上がみられています。また、βグルカンの摂取は、将来的に血糖コントロールを良好にします。理由は、βグルカンは腸内細菌に発効され、腸内である短鎖脂肪酸が合成されます。その短鎖脂肪酸は、消化管ホルモンであるGLP-1の分泌を促進して、耐糖能(糖質を処理する能力)をよくし、高血糖を抑制するからです。
塀の中の患者様という本に興味深い報告があります。当時、福島刑務所医務課を担当していた、日向正光医師は、受刑者の栄養摂取量が日本人の平均と同等以上であることや、運動量がそれほど多くないにも拘らず、インスリンで治療していた17人のうち5人が注射をやめる事ができ、経口血糖降下薬で治療していた34人についても、17人が服薬を中止できたことを踏まえて、刑務所の主食が今どき珍しい麦ごはんであることに着目したのです。当時の食物繊維量を調べると、日本人平均は約15gでしたが、受刑者平均は、なんと約30gもあったのです。ただし、不溶性食物繊維の量は変わらなかったのです。水溶性食物繊維の量については、受刑者は一般平均と比べて5倍以上もありました。
2006年のスウェーデンの臨床研究では、大麦の摂取が食後血糖値の改善をもたらしています。
2009年のインスリン抵抗性リスクのある、肥満女性17人の臨床試験でも、大麦βグルカン10gを含む食事が食後血糖値を大幅に低下させました。
2010年の試験でも、夕食+大麦を食べた人は、夕食+小麦パンを食べた人と比較して、翌朝の朝食後のインスリン感受性が30%向上しました。
こうして大麦のβグルカンの効果は医学的にも認められています。
また、オートミールの水溶生食物繊維の主成分はベータグルカンですので、オートミールでも良いです。大麦とオート麦の水溶性食物繊維におけるβグルカンの割合はほとんど変わりませんが、大麦の方がアラビノキシランの割合が多いです。*アラビノキシランも水溶生食物繊維です。
【大麦の水溶性食物繊維の割合】
βグルカン74%、アラビノキシラン5%、そのほか18%。そして、このアラビノキシランは、
とても有効な効果があるということで最近注目されているのです。つまり、大麦(もち麦)には、βグルカンとアラビノキシランの相乗効果が期待できるのです。最強のコンビでしょう。
もう一つ特筆すべき、もち麦の効果があります。
それは、セカンドミール効果です。セカンドミール効果とは、1日の最初に摂った食事(ファーストミール)は、その次に摂った食事(セカンドミール)の後の血糖値に影響を及ぼすことです。簡単に言えば、今食べた食事における血糖値は、前回の食材で何を食べたかで、その上がり方が決まるというものです。最近では、朝食抜きの16時間ファスティング等が流行っていますが、セカンドミール効果や血糖コントロールの視点から見ると、悪影響となります。(エビデンスあり)特に昼食・夕食の血糖値に対して、セカンドミール効果を狙える朝食の食材は何と言っても「もち麦」です。是非、もち麦を食べて下さい。
ただし、大麦にアレルギーのある人や、大麦に含まれるホルデインというタンパク質に対してアレルギーがある人は、念のため控えてください。
それから、もち麦にグルテンは含まれていますか?と質問がありますが、含まれておりません。
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